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10/21 未来への飛翔

2019年10月21日

市原湖畔美術館で開催されている「夢見る力ー未来への飛翔 ロシア現代あーとの世界」展。昨日の続きである。

まず最初に私たちを出迎えるのはレオニート・チシコフによる「祖先の訪問のための手編みの宇宙ロケット」だ。着られなくなるまで着た衣類を割いてリボンにして編んでロケットの型に被せている作品だ。

ロケットの先端は天を指し、まさに未来への飛翔!の象徴のようでもあるが、このロケットは悲しいかな、天井から吊り下げられている。地上から同じ距離を保ったまま飛翔どころか、1㎜も進むことはできない。

しかし、それでいいのである。宇宙とは進むべき未来でもあるし、また還るべき故郷でもあるから…なんて思ったりもするのも、今展はまさにその宇宙とは何かということも含め、アーティストたちの作品を通してあれこれ思いを巡らさざるを得ないところがあったからなのである。

シンポジウムでは、ロシアが宇宙をどう捉えてきたのかを、沼野氏は思想や哲学、文学を通して、高橋氏は音楽、また鴻野氏はアートの文脈で語ってくださった。

沼野氏からはロシアコスミズムの潮流のお話もあり、高橋氏は革命における音楽家たちの企みを解説してくださり、そして、鴻野氏は象徴主義の時代から現代までの主だった動きとまた今展のアーティストについて詳しく述べてくださった。とても勉強になった。

絵本的立場からすると、ベヌアの絵に多く登場する噴水の解釈、「宇宙的な高みを目指す人間の心」が面白かった。彼の描く水に映った風景描写は美しい。

水辺に映るといえば、地下階には水を張ったポノマリョフのインスタレーション作品があった。タイトルは「ナルシス」だ。彼は、ここではないどこか、を海に求め、彼にとって宇宙を感じる場所という南極でビエンナーレを開催しているアーティストだ。

知識もなくアート云々を語る立場ではないという前置きは必要だし、また断片的な情報から物を語るのは気がひけるのだけれども…アメリカのアートサイドがテクノロジーに乗っかる方向で、実際の宇宙で美術展を開こうと考え、まずは人工衛星に絵を描いたりしていることを読んだりしていて、そこと単純に比較するのは無謀すぎるのかもしれないけれど、今展の作品を見る限りにおいて、コスミズムに向き合うことから作品を作ったり、月を抱えて世界を旅したり、人生を振り返ったり、天国をイメージしたり、和紙と竹で美しい羽根を作ったり、海を越えて極地を目指したり、というところが、ああロシアなんだなぁとしみじみ思ったり。

さて、それはそれとして、帰り道、すっかりコスミズム!に感化された私からは、車から遠くに見えるカッコイイ市原湖畔美術館の建物自体がまるで宇宙基地のようにも見えたし、展望台がまるでロケットの発射台にも見えたり。

とすれば屋上のトクサの群れのようなパイプオブジェは宇宙と交信しながら揺れるはずだろう。多分。きっと。(直)
市原湖畔美術館


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