ダイアリー
1/12 プリーシヴィン
2025年01月12日
2025年。
本年もよろしくお願いいたします。
今年もありがたいことにモスクワのラチョフ氏の義理の息子さんであるトゥルコフさんから干支にちなんだ挿絵画像を送っていただきましたのでご紹介します。
出典はミハイル・プリーシヴィン著の自然と人間の物語『太陽の貯蔵庫』です。毎年どんなお話の挿絵が選ばれるのだろうと楽しみにしていますが、今年は巳年。ロシアの民話にほとんど蛇は登場しませんから(ウクライナのお話にはわりと出てきますが)そうか、プリーシヴィンか!なるほどと納得しました。
この挿絵は森でクランベリーを摘んでいた少女が切り株の上にいる蛇に遭遇して驚いているという場面からのものです。よく見るとトカゲや蝶々たちも見えます。
この送られてきたイラストには蛇に驚いている少女はいません。そして横にはトゥルコフ氏による、私(蛇)は怖くはないですよ…というメッセージがあります。実際、この蛇の表情はご機嫌でフレンドリーにさえ見えます。
一方、カランダーシで扱っているラチョフ挿絵のプリーシヴィンの著書の同じ内容のページを見ると、蛇は鎌首をもたげ口を開けています。
同じ文章の同じ場面の挿絵でもどの瞬間をとらえるのかも含めた表現の違いで受け取る側の印象は変わるのだとあらためて気付かされます。こちらの蛇はちょっと怖そうですから。
この物語は1945年にコンテストのために1ケ月で書かれたそうです。孤児になった兄妹がクランベリーをとりに危険な沼地に行き分岐点で離れ離れになり、兄は沼にはまってしまい…というお話でソ連時代長年にわたって義務教育のプログラムで採用されていたそうです。
カランダーシの資料の棚には翻訳書の『プリーシヴィンの森の手紙』(太田正一著/成分社)があります。こちらの挿絵はチャルーシンの孫であるナターリヤ・チャルーシンです。
森の生き物や植物たちのことをよく知り、鳥語も理解していたプリーシヴィンは森と水の詩人と言われ、春の訪れを順番に表現した「ひかりの春」「水の春」「草の春」「森の春」「人間の春」という言葉を生み出しました。
その繊細で臨場感溢れる文章を読んでいるといつの間にかロシアの森に迷い込んだような錯覚に陥ります。
今日のモスクワの最高気温は0度。ひかりの春はまだまだ先のようです(直)