現代ロシア挿絵画家の一翼を担うスピーリンが描くゴーゴリの古典。
220×290mm 40ページ ソフトカバー オールカラー
理髪師の朝食のパンの中から鼻が出てくる。その鼻の持ち主は朝起きて自分の鼻がなくなったことに気付く、きちんとした身なりをした自らの鼻と出会い…というゴーゴリの奇怪な話。スピーリンはレイアウトデザインに薄暗い暗雲たちこめる背景とリアルなペテルブルグの建物を配しており、ファンタジー(雲)ではあるがこれは現実(建物)でもあるというところを表現しているようにも見える。中心の挿絵では人物を大きくしっかりと描くことで物語の展開をひっぱっていっており、鼻のない顔の表現、鼻だけの顔の表現は特に注目したい。ブリューゲルに影響を受けた挿絵作品もあるスピーリンだが、そういう視点からこの絵本の挿絵を見ていくのも面白いかもしれない。奇想天外なお話のリアルさを担保するために細部の描き込みは大切だと思うのだが、主人公の皮のガウンのよれよれ具合などとてもリアルで見入ってしまうほどだ。