ビリービンの民話絵本。
ソフトカバー 光沢紙 12ページ 245✖️320
【ダイアリーより】
ビリービンの絵本は本当に様々な形で出版されており、根強い人気がうかがえる。約120年前に出来た絵本だが、やはりロシア民話絵本の真髄的な存在として今なお揺るがない圧倒的な存在感は天晴れだ。
今回ご紹介するのは光沢紙の大判絵本の「うるわしのワシリーサ」。もちろん石版印刷のオリジナル版とはまた異なる味わいだが、発色が鮮やかで細部までクリアで見やすい。版が大きいので迫力がある。
ワシリーサは継母やその娘たちからいじめられるが、母親から渡された人形がいつでも彼女を守ってくれる。お守りとしてのお人形が大活躍するお話だ。彼女は困難を切り抜けやがて王に見初められ妃となる。
ワシリーサは美しいだけではなく思慮深く眼差しを持ち、嫋やかではあるがしっかりとした骨格をもち、手などは大きい。骸骨の灯りを持つ立ち姿は警戒しながらも前に向かう意思が感じられてアクション映画のヒロインのようでもある。
不気味な雰囲気とワシリーサの凛とした美しさにゾクゾクしながら見飽きることのないページだ。(直)
イワン・ビリービン
(1876〜1942)
画家、舞台装置家。ペテルブルク生まれ。大学時ドイツ留学。イリヤ・レーピンに師事。ヴァツネツオフのロシア英雄叙事詩画などを見て衝撃を受け、以後ロシア民話や中世を作品に反映させるように。「芸術世界」の一員として民話画を描きはじめ、1901年から03年までに当時の印刷技術最高峰の国立印刷所から「うるわしのワシリーサ」など6冊の民話絵本を刊行。その後もロシア細密画、イコン画、ルボークなどの要素を取り入れ、アール・ヌーヴォーや浮世絵の影響も受けつつ、豊かな民族描写力、装飾モチーフのデザインセンス、美しくも落ち着いた彩色で描かれた美しい絵本を発表。オペラやバレエの舞台装置デザインでも活躍。ロシア革命後はエジプトやフランスにも滞在し、帰国後、36年からペテルブルク芸術大学教授。42年、ドイツ軍に包囲される中、防空壕の中で66歳で亡くなりました。