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『トゲトゲのコートを着たこぶた』

販売価格: 2,200円(税込)

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コズロフ作森の中の愛しき物語

ハードカバー  オールカラー  200✖️261 33ページ

和訳絵本も出版されている『霧の中のハリネズミ』を含むロシア人気児童文学作家セルゲイ・コズロフ(1938〜2010)作の愛おしい森の動物たちのお話が9篇収録されています。挿絵はウラジーミル・ペルツオフです。

本のタイトルは『トゲトゲのコートを着たこぶた』です。冬の寒い日に外を見るためにハリネズミが鼻をぎゅっと窓に強く押しつけると鼻の先が広がって窓の向こうから見たらまるでトゲトゲ付きコートを着たこぶたに見えた、というお話の内容からつけられています。

ハリネズミや森の生き物たちは身の回りのささやかな出来事に関心を寄せ想像を膨らませます。例えば雪に閉じ込められ薪がなくなろうとしている家の中でハリネズミは想像します。動物園のぞうがやってきて、自分の家見つけてくれて煙突に鼻を入れて暖かい息を送ってくれる事を…。

深い森の中。寄るべない動物たちはそれぞれ孤独と不安を抱えて日々生きています。その動物同士で交わされる会話の数々や行いが読む者の心の奥底にじんわりと深い余韻を残します。

動物たちは日常の些細な事や自然現象だけではなくオオカミとの戦いを想定したり仲間の生死に関わるというような様々な出来事に遭遇します。彼らはその時々で想像力を用いたりしながらそれなりの解決や納得や折り合いをつけてゆきます。大抵はほのぼのじんわりとした感触の展開ですがその様子が淡々と物語られてゆくのです。

結果としてユーモアもある感性豊かなある種哲学的な物事の受け入れ方が提示されている物語と捉えることももできるでしょう。生きていく上でのささやかな希望となるような。

でもやはり忘れてはいけないのはこの小さき動物たちの宿命である常に逃げることのできないあるいはいつ襲いかかってくるかもしれない絶望と諦念が大前提にあるということでしょう。だからこそコズロフの物語は閉塞感を持つ現代人の私たちの心に沁みてくるのでしょう。今はまた特に。

ペルツオフの挿絵は抑えた色調と素朴で偽りのない動物たちの表情描写で見る者に優しく語りかけてくれます。

挿絵は違いますが『ハリネズミくんと森のともたち』というこの絵本のお話も収録されているコズロフのお話集が岩波書店から出ていますのでこちらもおすすめします。
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