ダイアリー

3/16 お人形

2025年03月15日



暖かくなってきたせいか、ビオラたちは元気に花数を増やし、そして色も明らかに一段と濃くなってきています。毎年こうだったかしら?と思うほど今年は顕著です。つい先日まで枯れ枝だったはずの雪柳や昨秋球根を植えた黄水仙も咲き出しました。この1週間の変化は目覚ましいものがあります。

初めて吉祥寺のPARCOビルのアップリンクで映画を観ました。地下ですしちょっと穴蔵感があります。映画は泣く覚悟で行きましたが泣きませんでした。売店で買った温かいカモミールティーを飲みながら鑑賞しました。私は本当にここ数年カモミールティーをよく飲んでいます。

書評を見て『ソーンダーズ先生の小説教室』(ジョージ・ソンダーズ著/秋草俊一郎、柳田麻里訳/フィルムアート社)を購入しました。ロシア文学の短編を読み解きながらの文学講義の本です。現代アメリカを代表する作家がどのようにロシア文学を解剖していくのか興味深いですし、学ぶことが多そうです。ちょっと分厚いですが楽しみながら読めそうです。

新しい絵本を紹介しています。
チェルカシン作、トラウゴート画の『お人形』という絵本は、独ソ戦で包囲された旧レニングラードで暮らしていた少女とお人形、そして家族の物語です。以下、お話の概要を調べました。戦後、レニングラードの街の古道具屋で少女は学校帰りに偶然かつて祖父から贈られたお人形を見つけます。大きくて立派なお人形は贈られた当時少女と同じくらいの大きさがあり、マーシャと名付けられます。やがて戦闘激しくなる中、少女はお人形をレニングラードの祖父の元に置いて疎開しなければなりませんでした。封鎖解除後、レニングラードに戻った時、祖父たちは餓死したことを知らされ、アパートの部屋には知らない家族が勝手に暮らし始めていました。その後、少女は母親と一緒に学校帰りにお人形を見た古道具屋に行きます。お人形、そして見覚えのあるお茶のセットはアパートの部屋に勝手に越してきた家族によりこの店に持ち込まれた事を知ります。店主に交渉しても返却はできないと言われ、母親は頑張ってお金を貯める努力をし、やっと古道具屋に行ける日が来て、少女も楽しみに待っていましたが、すでにお人形は他者へ売られた後でした…。

チェルカシンは幼少期、戦火で父親を失い本人も過酷な経験をしています。この物語は彼の妻の思い出に基づいて書かれました。具体的な戦闘場面などではなく、白湯を「白夜のお茶」と言い飲む事や、倒れたままの電車を目を覚ます元気もない、と言う日常の会話や、疎開先の寂しさ、包囲された祖父たちが餓死して集団墓地に埋葬されたこと、勝手にアパートに住んでいる人の傍若無人ぶりなどなどを通して戦争がもたらす非情さを実感を持ってにそして文学的に伝えます。戦争は人の心の最も大切な物をも理不尽に奪い去ります。「お人形」はその象徴なのです。

トラウゴートの沈んだ色合いの滲んだ水彩の筆先から生まれる心の中を映し出す人物表現ーー祖父の優しくも威厳に満ちた眼差し、母親の憔悴しながらも尊厳を失わない表情、感受性豊かな少女の瞳のゆらめきなどが胸に迫ります。冒頭見開きには戦闘機により攻撃を受けるレニングラードの様子が描かれています。(直)


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