ダイアリー

12/3 人生

2019年12月03日

翻訳版「ちいさなタグボートのバラード」。ブロツキーの訳詩の言葉を噛み締めながらゆっくり読む。あわててはいけない。言葉が静かに胸に降りてくる。

タグボートは「ぼく」という一人称で語っている。その「ぼく」の日常を、オレイニコフは、夢のような現のような、独特の世界観で描き出している。

効果的な構図、遠近法、ページ毎に異なる水や空の表現、デフォルメとリアル、濃と淡、静と動、明と暗…。大胆で自在な発想と緻密な計算。ユーモア。詩の言葉に呼応しながら、あるいはその彼方のイメージへと誘う表現には感服せざるをえない。

最後のページ。「宿命の入り江」のシーンだ。タグボートはずっと色付きの蒸気を煙突から出していたのに、ここでは白い。そして遠い。じっと見ている乗組員たちは皆年老いている。(オタマを持っているコックの彼女もいる)。詩の言葉ひとつひとつを追いながら、乗組員の横顔を見ながら、意味することを静かに受け取る。

絵本を閉じても深い余韻が残る。人生で出会えてよかったと思える、そんな絵本だ。
翻訳に感謝。(直)

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