ビリービン1935年の作品。必見!特に空を飛ぶじゅうたんの図は素晴らしい!美しい!
・高級PB仕上げ・ソフトカバー・23ページ・24×31センチ
1935年作ですから、国外に亡命して、帰国する直前あたりにパリで描かれたものと推察されます。ビリービンはロシアの民族的なものへの造詣が深く作品にもそれがいかされていましたが、この挿絵を見ると、オリエンタル文化をよく研究して表現しているなあと感心させられます。背景、小物にいたるまで細かいところまで目が届いて描きこまれていて、そういうところを見ていても飽きません。それぞれの構図も面白く、遠近感を巧みに取り入れて立体的です。これは舞台美術で培われた才能がいかされているかなと思いますし、人物描写も主役の三人の伊達男はもちろん、すみずみの人まで大切な登場人物として描きこまれていることが伝わってきます。ビリービンは、これも舞台芸術の衣装の仕事のたまものなのだと思いますが、衣装の表現、布のドレープの描き方など大変留意して描いています。よく見ていると、質感まで確認できます。
そして特に秀逸なのが、この空を飛ぶ絨毯の絵。下に見える建物、だけではなく鶴を飛ばしたことで「高さ」がさらに強調されていますし、その逆方向の鶴により「速さ」も伝わってきます。じゅうたんのうねり、たなびくターバン!
ロシアの物語ではないということで、今まで見かけることはなかったのかな?私にとっては発見でした。色も美しいです。
イワン・ビリービン
(1876〜1942)
画家、舞台装置家。ペテルブルク生まれ。大学時ドイツ留学。イリヤ・レーピンに師事。ヴァツネツオフのロシア英雄叙事詩画などを見て衝撃を受け、以後ロシア民話や中世を作品に反映させるように。「芸術世界」の一員として民話画を描きはじめ、1901年から03年までに当時の印刷技術最高峰の国立印刷所から「うるわしのワシリーサ」など6冊の民話絵本を刊行。その後もロシア細密画、イコン画、ルボークなどの要素を取り入れ、アール・ヌーヴォーや浮世絵の影響も受けつつ、豊かな民族描写力、装飾モチーフのデザインセンス、美しくも落ち着いた彩色で描かれた美しい絵本を発表。オペラやバレエの舞台装置デザインでも活躍。ロシア革命後はエジプトやフランスにも滞在し、帰国後、36年からペテルブルク芸術大学教授。42年、ドイツ軍に包囲される中、防空壕の中で66歳で亡くなりました。