美しいロシア絵本の世界を是非お手元でお楽しみください。
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2025年3月
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2025年03月29日


今年もゆすら梅の花が咲きました。その小さな白い5弁花がやがてルビー色の実になります。実はこの木は近年あまり調子が良くなく枝を少なくして様子を見ています。植木屋さんによると根の近くに温水の通るパイプがあるからかもしれないということで、移植も難しいとのこと。今年もきれいな花を咲かせてくれてありがとうという思いでいます。


ご近所の桜を始めとして木の花々が競って咲き出して散歩が楽しい季節です。ちょっと離れたところに花梨畑があるのですが今年初めて開花の様子を見ました。勝手に白色の花を想像していましたが、濃い桃色のカップ状のお花であることを知りました。ここは畑ですが放置されていて実がなっても収穫されずやがて根元にボトボトと落果しています。落果の頃は熟した花梨の甘い香りが辺りに漂います。

タイ、ミャンマーで地震がありました。今後被害の状況がどんどんわかってくるでしょう。助けを必要としている人たちに救援の手が行き届きますよう願っています。


木曜日にクニーシカの会がありました。コズリナ先生のご指導のもと今回は『Сказки про МАМ』の最後のお話を読み、『Моя собака любит джаз』という新しいテキストに入りました。


新しいテキストに入る前に作家と画家について先生が作ってくださった資料に基づいてお話がありました。画家はウラジーミル・ブルキン。モスクワ建築大学卒業でイラストレーションと風刺画の分野で有名なアーティストです。ソ連時代、建築大学出身は大変なエリートとのことで、かつてのコズリナさんのモスクワのアトリエと同じ建物で仕事をしていたそうで、優しい人だそうです。


作家は子どもだけではなく大人向けの書籍の著者でもあるマリーナ・モスコヴィナ。モスクワ大学卒でジャーナリストの仕事もしています。旅行家であり『枕草子』についての著述もあるロシアでとても人気のある作家です。そして今回は彼女のパートナーであるコンセプチュアル・アーティストのレオニード・チシコフについての紹介もありました。


チシコフについては個人的には2019年、市原湖畔美術館で開催された「夢みる力 未来への飛翔 ロシア現代アートの世界」で作品を直接見てますし、また絵本『かぜをひいたおつきさま』(徳間書店)や、プライベート・ムーンという月のオブジェを使ったプロジェクトでも知っているので親近感があります。


またモスコヴィナについて、うっかりしていましたが、先日こちらでも紹介したと思うのですが『ワニになにがおこったか』(偕成社)の作者であることに今さらながら気づいて、俄然この新しいテキストに興味が湧いてきました。知っている作品や作者が繋がってゆくのは嬉しいことです。まだ少ししか訳していませんが、僕と飼い犬のキートがジャズをめぐってどんなセッションをしてゆくのかこれから楽しみに学んでいけたらと思っています。

クニーシカの会では随時参加者を募集しています。ご連絡お待ちしています!


新しく絵本を紹介しています。『お話の木』は久しぶりの再入荷絵本です。以下は新入荷時の紹介文です。


ボリス・セルグネンコフ作の農村の暮らしと動物たちをテーマとした物語集。人生や運命の深淵に気付かされるようなシュールな味わいも魅力の創作物語集。


シンプルな短い淡々としたお話の中にある意味あいや味わい、またはこめられた皮肉。深い余韻を伴って読み手に独特の印象を残すはずだ。


ある老婆がもう世話はできないからと、長年共に暮らしてきた牛を売りに行くが泣いてそれはできない。結局は連れ帰るが、その牛が人間のように働き老婆を助けるようになるというお話などの他36篇のお話をゆっくり味わいたい。


作家は1931年にハバロフスク生まれ。現在はサンクトペテルブルク在住だ。挿絵のカリンナ・プレトロが素晴らしい。彼女は作家の妻とのこと。こちらもシンプルでいて哲学的な表現が深い。こういう絵本に出会えるのは本当に嬉しい。素敵。


今日は土曜日ですが、急に気温が下がり冷たい雨が降っています。熱いコーヒーとささまさんの「吉野山」をいただきます。桜が長持ちしますように。(直)

2025年03月22日

水曜日は、朝雪が降り出してみるみる積もり、やがて雪は雨になり積もった雪はどんどん溶けてゆきました。ほんの数時間で季節の移り変わりを早送りで見るようでした。

新しい仕事椅子が届きました。大きな段ボール箱を見ると、ルーカス(飼っていた犬の名前)が喜ぶだろうなと思ってしまいます。天国に行ってからもう何年もたつというのに。新しい椅子は腰の事を考えて選びました。よろしくお願いしますという気持ちで座り始めています。


新しく絵本や児童書を紹介しています。『くまのプーさん』は1926年に発表されたA.Aミルン作、
E.Hシェパード挿絵の世界的ベストセラーの英国児童文学の露語版です。翻訳はボリス・ザハディル。ロシアではソ連時代にこれを原作にして絵本が作られ、フョードル・ヒトルークによりアニメ化されて以来大変親しまれていますが、プーさんの見た目も設定もまたお話の内容も随分異なりますからちょっと驚いてしまいます。それはそれとして、このアニメの独特の世界観を見てみるのはおすすめです。
https://youtu.be/Ekmc1HZ5_XY?feature=shared


ヴァスネツオフ画の『きつねとうさぎ』はカランダーシ刊『うさぎのいえ』と同じお話です。このお話はロシアでも日本でも親しまれており画家の異なる絵本を色々見られる楽しみがありますから見比べてみるのも楽しいです。


『うさぎのいえ』は初めて出版した絵本ですからとても思い出深いのですが、ラチョフのオリジナルのデータを受け取った時の感動は今でもよく覚えています。覚悟していたとはいえ、何から何までひとりで作業してゆくのは中々にハードで出来上がった時にはぼーっとしてしまってました。慣れないことばかりで不安もありましたが何よりラチョフの描く動物たちが魅力的で彼らに励まされながらの日々でした。本当に皆さんに手に取っていただけるものを作れて良かったです。


ヴァスネツオフ版は、うさぎがときつねが家を建てるシーンが面白いです。雪が降る中どちらも工夫を凝らして作業をしているのがわかります。うさぎは斧を使っています。ロシアでは結構細かい作業まで斧でやってのけます。貴重な窓ガラスを木の枠で囲っているところなどとてもリアルですし、高床になっているところや玄関スペースと部屋は分かれているところなど見ていて楽しいのです。きつねはスコップで氷のブロックを積み重ねる工法です。出来上がりは豪華です。どのページも植物の描き込みが豊かで森の様子がわかりますし季節感が伝わります。ナナカマドの赤色が効いてます。

今年もそろそろきつねの氷のお家が溶けてしまう季節になりました。『うさぎのいえ』の季節です。(直)






2025年03月15日



暖かくなってきたせいか、ビオラたちは元気に花数を増やし、そして色も明らかに一段と濃くなってきています。毎年こうだったかしら?と思うほど今年は顕著です。つい先日まで枯れ枝だったはずの雪柳や昨秋球根を植えた黄水仙も咲き出しました。この1週間の変化は目覚ましいものがあります。

初めて吉祥寺のPARCOビルのアップリンクで映画を観ました。地下ですしちょっと穴蔵感があります。映画は泣く覚悟で行きましたが泣きませんでした。売店で買った温かいカモミールティーを飲みながら鑑賞しました。私は本当にここ数年カモミールティーをよく飲んでいます。

書評を見て『ソーンダーズ先生の小説教室』(ジョージ・ソンダーズ著/秋草俊一郎、柳田麻里訳/フィルムアート社)を購入しました。ロシア文学の短編を読み解きながらの文学講義の本です。現代アメリカを代表する作家がどのようにロシア文学を解剖していくのか興味深いですし、学ぶことが多そうです。ちょっと分厚いですが楽しみながら読めそうです。

新しい絵本を紹介しています。
チェルカシン作、トラウゴート画の『お人形』という絵本は、独ソ戦で包囲された旧レニングラードで暮らしていた少女とお人形、そして家族の物語です。以下、お話の概要を調べました。戦後、レニングラードの街の古道具屋で少女は学校帰りに偶然かつて祖父から贈られたお人形を見つけます。大きくて立派なお人形は贈られた当時少女と同じくらいの大きさがあり、マーシャと名付けられます。やがて戦闘激しくなる中、少女はお人形をレニングラードの祖父の元に置いて疎開しなければなりませんでした。封鎖解除後、レニングラードに戻った時、祖父たちは餓死したことを知らされ、アパートの部屋には知らない家族が勝手に暮らし始めていました。その後、少女は母親と一緒に学校帰りにお人形を見た古道具屋に行きます。お人形、そして見覚えのあるお茶のセットはアパートの部屋に勝手に越してきた家族によりこの店に持ち込まれた事を知ります。店主に交渉しても返却はできないと言われ、母親は頑張ってお金を貯める努力をし、やっと古道具屋に行ける日が来て、少女も楽しみに待っていましたが、すでにお人形は他者へ売られた後でした…。

チェルカシンは幼少期、戦火で父親を失い本人も過酷な経験をしています。この物語は彼の妻の思い出に基づいて書かれました。具体的な戦闘場面などではなく、白湯を「白夜のお茶」と言い飲む事や、倒れたままの電車を目を覚ます元気もない、と言う日常の会話や、疎開先の寂しさ、包囲された祖父たちが餓死して集団墓地に埋葬されたこと、勝手にアパートに住んでいる人の傍若無人ぶりなどなどを通して戦争がもたらす非情さを実感を持ってにそして文学的に伝えます。戦争は人の心の最も大切な物をも理不尽に奪い去ります。「お人形」はその象徴なのです。

トラウゴートの沈んだ色合いの滲んだ水彩の筆先から生まれる心の中を映し出す人物表現ーー祖父の優しくも威厳に満ちた眼差し、母親の憔悴しながらも尊厳を失わない表情、感受性豊かな少女の瞳のゆらめきなどが胸に迫ります。冒頭見開きには戦闘機により攻撃を受けるレニングラードの様子が描かれています。(直)
2025年03月08日



先週末の暖かさから一変して今週は雪も降り寒い1週間でした。そんな中ですがカランダーシのベランダの沈丁花が咲き出しましたし、水栽培のヒヤシンスのピンク色の方は2番花を咲かせくれましたし、ささやかな香りの春を楽しんでいます。

ささまさんの生菓子「草包み」はもち草の新草の香りも濃く口の中に春が広がります。体調のせいでしばらく臭覚や味覚がぼんやりしていたのですが、やっと調子が戻ってきたようです。色々な春の香りがありますが、蓬の香りは特に嬉しく懐かしいものです。子どもの頃は身近な存在でしたが日常的に見かけることもなくなりましたから尚更です。

今週NHKBS「世界ふれあい街歩き」を途中から見たのですが、カザフスタンのアルマトイを訪れる内容でした。出てくる人々はそれぞれロシア語、カザフ語そして確か英語も話していました。郊外のカザフ人の家庭の庭での午後のお茶会の様子が出てきましたが、同居している娘のお婿さんはロシアルーツの人です。当主は愛があれば人種への拘りはない(ニュアンス)と笑っていました。

そのテーブルには200年前のサモワールが置かれて現役!で働いていました。このような家族で囲むお茶の時間の積み重ねがきっとお互いの絆を深め強くしてきたのでしょう。その真ん中にこのサモワールがいつもデーンと存在していたのだと思うと感慨深いものがありました。

新しく絵本を紹介しています。マーヴリナの『プーシキンお話集』は1976年にロシアで初めての国際アンデルセン賞を受賞したタチヤーナ・マーヴリナが素晴らしい挿絵をつけたプーシキンの物語集です。マーヴリナが精力的にプーシキンの作品の挿絵に取り組むようになったのは1950年代でこの10年間に多くの物語集が出版されその功績が60年代に国内外で認められ多くの名誉ある賞を受賞します。70年代に再びプーシキンの作品に取り組み全ての作品に挿絵を描きます。

このようにマーヴリナのアーティスト人生においてプーシキンはとても重要な存在です。当時のロシアの殆どのこどもと同じく幼い頃からプーシキンの詩や物語に親しんできたマーヴリナは「これほどロシア的な詩人はいない」と語っています。マーヴリナはそれまで培ってきた芸術的手法に、イコンやルボークの学びや民藝への探究の成果なども加えてまさに独自のスタイルを生み出しその才能を大きく開花させました。天才的な柔軟な線の軌跡や目を見張るカラフルな色使いやユーモアを交えたキャラクターの造形は今なお世界中の子どもたち、大人たちをも魅了し続けています。

収録されているのは「ルスランとリュドミラよりルコモリエ」「サルタン王物語」「死んだ王女と7人の王子の話」「金鶏物語」「漁師と魚の話(金の魚の話)」「雌ぐまの話(未完)」です。冒頭のルコモリエは文字もマーヴリナが描いおり絵本のように贅沢に見開きで絵が楽しめます。たっぷりとマーヴリナの絵でプーシキンのお話の世界を堪能できる宝物のようなお話集です。






2025年03月01日


3月が始まりました。少し前になりますが神代植物園に梅を見に行きました。この時はまだこれからという感じでしたが、今頃はきっとどの木も満開でしょう。蝋梅が美しく良い香りだったのが印象に残っています。実は最近体調が芳しくなくぼんやりしていましたが、庭の蕗の薹や水仙が随分と季節が進んでいることを教えてくれます。

木曜日はコズリナ先生のご指導のもとクニーシカの会を開催しました。今回は林檎の漬物(Мочёные яблоки)を作るのが得意なお母さんとそれが大好きな息子のお話でした。クマになる魔法をかけられた息子は知り合った雌グマと結婚のキスをしたら元の人間の姿に戻りましたが、その雌グマが実は王様の娘で…というお話です。

Мочёные яблоки は林檎を酢や砂糖などを混ぜた液体に漬け込んだもので、ダーチャなどで枝にたわわに実をつけた大量の林檎を何とかして無駄にしないようにと考えた保存食でコズリナ先生にとっては祖母の味的なものらしいことなど教えていただきました。

この漬物に私たちは興味津々であれこれ質問しながら味を想像したのですが、結局多分皆ピンとはこなかったような気がします。個人的にはいつか実物を是非食べてみたいと思っています。

奇想天外な短いお話をたくさん読んできましたが、いよいよ次回短いお話をひとつ読んだらこの『Сказки про МАМというテキストもおしまいです。次は先生が選んでくださった『Моя собака любит джаз』(僕の犬はジャズが好き)という本を読んでいきます。タイトルだけでも面白そうなので今から楽しみです。この機会に是非クニーシカの会にご参加ください。ご連絡お待ちしています。

新しい絵本などを紹介しています。その中の『ジャックが建てた家』はサムイル・マルシャークがイギリスの有名な民謡やルイス・キャロルやキップリングなどの作家たちが創作した児童のための詩を翻訳したものを編んだ一冊です。マルシャークは新婚時代の1912年にロンドン大学に留学しておりイギリス中を歩き民謡を聴き、翻訳に取り組み始めました。

書籍のタイトルになった「ジャックの建てた家」はイギリスの児童民謡ですが、
ーほら、これはジャックが建てた家、
ーこれはジャックの建てた家の暗い納戸に保管されてる小麦…
と次々と言葉が積み重なってゆく積み重ね唄と言われるものです。英国のオリジナル絵本としてはコルデコットの挿絵の絵本が有名かもしれません。繰り返しのリズムと思いもよらぬストーリー展開をマルシャークによるロシア語の詩で楽しむのも愉快なことでしょう。

挿絵はイリヤ・カバコフ(2023年没)。ソ連時代後期からトータル・インスタレーションアーティストとして世界的に名を馳せたカバコフは、一方で長い間児童書や雑誌のイラストレーターとして仕事をしてきました。この詩集では、挿絵をコマ割にしたり背景の中に囲み枠を使って描き分けたりと1作1作描き方に工夫がありとても面白いですし、巧みな線画で描かれる世界観は軽妙でありながら味わい深く余韻が残ります。





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