美しいロシア絵本の世界を是非お手元でお楽しみください。
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2020年04月30日

4月も今日で終わりだ。色々な思いを抱え過ごしたひと月ではあったが、季節がきちんと前に進んで色々な表情を見せてくれることに励まされる日々でもあった。今朝アゲハ蝶を見かけた。

森の動物たちのささやかだけどかけがいのない日常や友情を描き心に静かな余韻を残すセルゲイ・コズロフのお話。そのしみじみとしたファンタジーの世界に色々な画家が挿絵をつけているが、その中の1つだ。この絵本には5つのお話が入っている。

今回ご紹介するのはナターリヤ・マカリェンコの絵本。動物たちの表情がはっきりとしていて楽しそうだし、夜の場面も明るさを抑えながらも暗くなりすぎないよう豊かな色の世界を見せてくれてとても魅力的だ。

滲みを生かしたその独特の美しい色の響き合いが素晴らしく見入ってしまう。幻想的だけれども森のリアリティも伝わり素晴らしい。その中に登場する動物たちは親しみやすい。ポップなニュアンスも醸し輪郭もはっきりとアクティブにお話の世界を体現していて、そのバランスこそがこの絵本の見せ所なのかもしれないと感じている。

お馴染みの「霧の中のハリネズミ」のお話もある。ヤールブソワの絵本と見比べも楽しいかもしれない。コズロフのお話は「ハリネズミくんと森のともだち」(岩波書店)という邦訳児童書で読むことができる。(直)

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2020年04月28日

早朝、何の鳥だろう?いく種類かの鳥がひととき一斉にしきりに鳴いていた。聞きなれない鳴き声も混じっていたような気もして、耳を澄ましていたのだが、あとはシーンとしてしまった。聞き耳頭巾が欲しいところだ。結構重要な情報を聞けるのではないか。

20世紀初頭のロシアの芸術シーンに登場する「芸術世界派」のことはとても重要であるし興味深く思っている。今回、その中心人物であるディアギレフと彼がい創設した「バレエ・リュス」の天才バレエダンサー、ニジンスキーをテーマとした山岸涼子さんの漫画「牧神の午後」(メディア・ファクトリー)があることを知り読んでみた。

最初のパリ公演の緊張の幕開け。演目は「アルミーダの館」。ニジンスキーの伝説の跳躍、大歓声に続く驚異の踊り、息を飲む聴衆、からの怒涛の拍手…ここから始まる「バレエ・リュス」の華々しい成功。この漫画はニジンスキーとディアギレフ両者の類稀なる功績とその関係性のデリケートな経緯を中心に細かいエピソードと共にまとめられている。

ニジンスキーと母親との(切ない)何気ないやりとりなども描かれていたり、ニジンスキーの人間像を丁寧に伝えてくれる内容で、それだけにやはり何てこった、の思いが強くなる。

ニジンスキーの代表作である「牧神の午後」の美術、衣装はレオン・バクストによるものだ。漫画の冒頭にバクストも登場する。ちょっとお調子者ふうに描かれている。そうだったのだろうか。ストラビンスキーもちょっと出てくる。もちろんこの時期、他にも数多の芸術家や取り巻きがこの2人の周りに存在していたはずだが、ニジンスキーは彼らとはまた別の次元で生きており登場人物は限られている。

「作品集・パリのレオン・バクスト」の表紙は「牧神の午後」のデザイン。中には当時の写真も収められている。(直)

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2020年04月27日

ジャスミンの花が盛りを迎えて、入道雲のようにもくもく沸き立っているような形で咲いている。力強い生命力にあやかりたい。

マヤコフスキーの詩によるアヴァンギャルド絵本を2冊ご紹介。「いいことってどんなこと?わるいことってどんなこと?」と「動物がたくさん!ゾウからライオンまで」だ。

「いいこと…」は文字通りしてよいこと、悪いことを教える絵本。未来を担うこどもたちへのマヤコフスーからのメッセージだ。短い言葉とシンプルでとてもわかりやすいニコライ・デニソフスキーの絵が一体となってはっきりとよいこと、わるいことを教える。

「動物…」は次から次へと動物たちが登場する楽しい絵本。ロシアには元々いないライオンやカンガルー、ペリカンやラクダなどを珍しい憧れの動物たちをユーモアを交えてマヤコフスーが紹介。キリル・ズダニヴィッチは動物のありようを的確にとらえそのフォルムを担保しつつ軽妙にして洒脱に表現して見事だ。

ロシア革命を「私の革命」と呼びアヴァンギャルドの旗手として大いなる足跡を残しながらその革命の行末に絶望を持たざるをえなくなり(といわれている)37歳でピストル自殺をしたマヤコフスキー。

マヤコフスーは未来そして希望を託すべきは子どもたちだとの思いから詩を書き、絵本を作った。その志をこれらの絵本からくみ取りたい。

ロシアがアヴァンギャルド絵本を当時のままで復刻し出版しているシリーズより。(直)

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2020年04月25日

今朝外階段の周りのバフ・ビューティというバラがひとつ咲いていた。小ぶりの花だけどアプリコット系の色が優しい。今年も咲いてくれてありがとうと思う。

ラチョフ画の「てぶくろ」。福音館書店の邦訳版が超ロングセラーを続けている絵本でご存知の方も多いと思う。露語版はラチョフの描く色々な表現を見てきたがこれはかなり邦訳版と近い。

でも大きな違いがある。最後のページだ。邦訳版の絵には登場しない犬が描かれているのだ。邦訳版では、テキストで「わん、わん」と犬が吠えていることは書かれているが、そのページに犬は描かれていない。もぬけの殻になった手袋だけが描かれている。

絵の犬は手袋を見つけてちょっと嬉しそうに見える。飼い主であるおじいさんにきっと褒めてもらえるはずだ。

それから、邦訳版では犬について「こいぬ」と表記されているが、露語版ではロシア語の表記は「собака =犬」で子犬(あるいは小さな犬?)という特定の表現を使っていないことに気づく。また絵の表現でも大きめの柴犬くらいの大きさの成犬だと思われる犬が描かれている。

ということで、英語版も持っているので見てみたら、こちらはリトル・ドッグとなっている。うーん。よくわからない。とにかく犬であることは間違いない。(直)
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2020年04月24日

アレクセイ・トルストイ作「キツネとつる」はとにかく色使いが明るくてきれい。表紙のピンクに元気をもらおう。きつね嬢のドレスやパラソルもとても素敵。つるだって相当おしゃれだ。絵はローシン。

お話は、キツネがつるを招待するが、平たいお皿でもてなしてつるは食べられないので結局キツネが全部食べてしまう。今度はつるがキツネを招待するが細い首の水差しでもてなしたためキツネは食べられないのでつるが全部食べてしまう…という内容。

キツネが出したお料理はロシアのお粥的な料理であるカーシャで、しかもお皿に塗りつけている。これではつるは食べられない。一方キツネが出した料理はオクローシカといって、お肉(あるいは魚やハムなど)と野菜(きゅうりや茹でたジャガイモやニンジン…)を細かく切り、ハーブを加え、ロシアでよく飲まれているクヴァスという微炭酸飲料を注いで作る冷たいスープだ。何せよ、細い首の水差しからはキツネは食べることはできない。

私はオクローシカを食べたことはない。でも、何となくつるが好みそうかもしれないとは思っている。いつか食べてみたい。
できればロシアで。
できれば普通のスープの器で!(直)

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2020年04月23日

このような状況になり、夫が在宅勤務となったのだが、それに合わせてこちらも1日の時間の使い方を変えざるをえなくなった。起床時間も変えて、だいぶ慣れてきたかなぁ、というところだ。

その名も「時計」(スースロフ作/ブレイツ画)という絵本をご紹介。くま、うさぎ、ねこ、りす、などの動物たちが、1日をどう過ごしているのか時計の時間にそくして追ってゆくという内容だ。

朝は7時半に起きて、まず体操をしている。健康的だ。それから洗面をして朝食…。ページ毎に異なる時計が登場して時間を教えてくれる。何だか堅苦しい絵本?いえいえ動物たちが規則正しく生活している様子がとても微笑ましくて、1日一緒に過ごしてみたくなるほどだ。置き時計や壁掛け時計、柱時計などちょっと懐かしいような時計が出てくるのを見るのも楽しい。

何だか色々あるけれど、大切な時間。大切な1日。少しでもそう思って日々過ごしてゆけたらいいな、と思う。時計の針は戻せないし、進めることはできないから。(直)

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2020年04月22日

カランダーシでお取り扱いさせていただくことになった『アニメの詩人ノルシュテイン』(東洋書店新社)。帯に「ロシアアニメーションの巨匠のノルシュテイン。その人生と作品を、もっとも信頼される通訳者が描く。作品について、芸術について、世界について」とある。

これはノルシュテインと長きに渡り深い交流を続けられてきた通訳者であり、翻訳者であり、エッセイストである児島宏子さんの最新著書である。

冒頭のノルシュテインから児島さんへの愛のあるメッセージを始めとしてその交流が現在進行形であるという、そのリアルタイム感がまずは本書の大きな魅力だと思う。

おふたりが1993年に最初出会われた時のことを読むとその時から心通い合う様子がよくわかる。以来その交流は約30年にわたる。普段お互いは遠く離れて暮らしているけれど、尊敬し、理解し、本質的なところで繋がっている…ノルシュテインは児島さんのことを「友人」という言葉で記している。

そういう交流があるからこそこそ伝わってくる人間ノルシュテインの素顔、というものを知ることができるのは貴重であるのはもちろんだが、何といっても児島さんによるノルシュテイン諸作品の丁寧な解説が大変ありがたい。今後はカランダーシの部屋でいつも見ていた映像をぐっと興味深く見ることができるはずだ。気になる「外套」制作についても記述がある。また児島さんの思いも。

先ほど、この交流は現在進行形であると書いたが、本書の最後はまさに今年にについて希望ある文章で締めくくられている…。児島さんはその文章を書いている時にはまさか世界中が濃い霧の中に沈んでしまうような出来事が待ち受けているとは思ってなかっただろう。誰もがそうであるように。

でも、きっと霧の中のハリネズミがこぐまに会えたように、何があってもまたおふたりは再会を果たし、喜び合い、そして静かに深く語り合われるのだろう。
どうか、その日が早く訪れますようにと願うばかりである。(直)
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画像は庭のシラーとビオラたち。
2020年04月21日

今日はオンラインでクニーシカの会を開催した。先月はやむなくお休みをしたのだが、再開の目処が立つのがいつになるのかわからない。だったら…ということで踏み切ることにした。この提案にコズリナ先生も賛同してくださり、とにかくやってみましょう!ということになったのだ。

どんな方法にするか、利便性やセキュリティなどを調べてまず家族間でテストしたりする中、ロシア語会話の先生ともSkypeでのレッスンが始まり、オンラインで何とかやっていけそうだとの感触も得られてきた。参加者の皆さんへも連絡。それぞれ、ご事情もあり、参加が叶わない方々もいらっしゃるが、オンラインという方向性にはご理解をいただき、とにかく始めてみることにした。

ということで今日、とにかく離れ離れの場所にいながらも1つのテキストを読み合い、分かち合うことができたのは大変ありがたいことであったし、嬉しいことであった。オンラインに心から感謝である。

クニーシカの会。小さな歩みだけど大切な歩みだ。またここから一歩ずつだ。

画像はベランダのジャスミン。オンラインは便利だけど香りを届けることはできないのは残念だ。(直)
2020年04月20日

ロシアの郊外の家、ダーチャ。もともとは11世紀頃にピョートル1世がペテルブルクを作る際に家臣たちに与えた土地のことで、ダーチ(дать=与える)が語源とのこと。帝政時代は貴族、そして19世紀あたりになると中流階級の人々が求めるものとなるが、ソ連成立時に一旦没収され、後に労働者たちに広く与えられた。

現代でも週末には都市部から車を駆って郊外のダーチャに行き、菜園作りに勤しんだり、森でベリーやきのこをとったりする生活を送る人は多い。

自然豊かなダーチャの周りにいる様々な生き物たちを紹介している「生き物図鑑絵本・ダーチャには誰が住んでいるの?」数年前ハードカバー版をご紹介したが、今回好評のためソフトカバー版で再登場。前のページに隠れている次の生き物を当てたり、最後のページの身体の一部の一覧その動物が何かを当てたり、工夫を凝らした内容となっている。

今、モスクワなども大変な状況だ。街を閉鎖する前にダーチャへ疎開した人もいるようだが、今は無理と聞いている。仕方ないことなのだが、ライフスタイルにダーチャが組み込まれている人たちにとってそれも相当なストレスだろうと想像している。

郊外のダーチャの周りに暮らす生き物たちもいつもの春と違う変化を感じているのではないだろうか。(直)

詳細 https://karandashi.ocnk.net/product/126
2020年04月18日

今日は朝からかなりひどい雨で、お昼過ぎには大雨洪水警報が出て、サイレンが鳴ったりもしたが、夕方になる前には何事もなかったかのように青空になる。新緑に雨粒がきらきら。

「ロシア民族美術全集」はロシア伝統の民族的な絵柄、模様を工芸品と共に多数紹介、とても充実している。歴史や背景、そして描き方まで掲載されており大変参考になる。

普段ロシアっぽい柄、あるいはロシアっぽい色使いなどと漠然と持っていたイメージのルーツをここで見つけることができるのではないか。

絵柄のテーマは植物、花、実、そして鳥や馬、や人々の暮らしなど。色としてはやはり赤色がポイントとなる。また工芸品の材としての木の使い方の巧みさにも注目したい。

これらは昔から生活を彩り、飾られ、愛されてきたゆるぎない民族の宝物であり誇りでもある。ロシア文化を知り深く触れることのできる貴重な一冊。(直)
詳細 https://karandashi.ocnk.net/product/443
2020年04月17日

ビリービンの絵本の森の様子を見ていると、昔よく登っていた近所の山のことを思い出す。途中ひらけているけれど木が生い茂り、昼なお暗きゾーンを通るのだが、通り道から少し離れたところにある一軒の木造の民家?が気になっていたのを覚えている。人が住んでいるのだろうか?こんな陽の射さない森の中に?と思うのと同時に何とはなしの怖さも感じていつも足早に通り過ぎていたように思う。

ビリービンの挿絵で森の様子やバーバヤガーの家などを見ているとそんな遠い記憶が蘇ってきたりする。森の描写がリアルで怖さがある。無残な倒木、ひょろひょろと曲がって先行きが心配な細い若木。小さいのに枯れて葉を落としている幼木。地面に散らばり踏みつけられている枝。歩くとバキバキ音がするような。羊歯やきのこからは湿気も感じる。

ビリービンの民話絵本の挿絵では、自然、森の描写がとても見応えがある。森に注目すると、それはもはやいわゆる背景ではなく、登場人物と対等の存在感で迫ってくるような挿絵もある。

森のリアルな描写は物語の挿絵としておおいなる説得力を持っていると思う。枯れたり折れたり、生まれたりの木々の生々しい生命の現場を描くことで、物語の凄みが深まる。

数年前、ロシアの森できのこ狩りをした時、方向も何も分からず森に飲み込まれたように思った。リーダーがいなければ確実に遭難だと確信していた。きのこ狩りは、楽しいけれど森に圧倒される怖さや不安や緊張感もあった。

そんな中、いきなりどこからともなく1人のおじさんがずんずんと現れ通り過ぎていった時には心底驚いたの何の…。

そして、今。
暗い森の中に迷い込んでいるような日々でもあるなぁと思う。この物語はどんな風に紡がれてゆくのだろう。(直)
詳細 https://karandashi.ocnk.net/product/442

ビリービンについて
http://lucas705karandashi.blogspot.jp/2012/05/blog-post.html
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2020年04月16日

表紙の明るくて、きれいな色使いが心弾ませてくれる「モザイカー詩を集めたよ」は詩人エカテリーナ・セローバの詩にボリス・カラウーシンがとびきりの楽しい挿絵を寄せている。モザイカとは、いわゆるモザイクや寄木模様など、パーツを寄せ集め組み合わせて作り上げられている様子あるいはそのような様子を表現している言葉だ。

カラウーシンは1929年サンクトペテルブルク生まれ。芸術に理解のある家庭に生まれ、6歳のころからスケッチを始め、少年時代より自分の作品を纒めており、また文章も著している。戦後芸術アカデミーで学び、それからは主に子どもたちのための活動を中心に活躍。ずっとロシア・アヴァンギャルド表現を支持しており、それは自身の表現からも伝わってくる。作品は国立ロシア美術館やトレチャコフ美術館になどにも収蔵されている。1999年に亡くなっている。

新しさと素朴さと。攻めているけど、独りよがりではない。ユーモアが効いていて、終始一貫、読者=子どもたちに喜んでほしい、というスタンスが感じられるのだ。大人の私だって思わずニコニコしてしまう。でも決して媚びてはいない。

表紙見てるだけで何だか元気になる。
いいな、カラウーシン。(直)


2020年04月15日

ジャスミンが香っている。薔薇も小さな蕾をつけている。季節は前に進んでいる。

ラチョフ画「クルィロフの寓話集」。ラチョフの筆は動物の姿に人間性を見事に投影させて迫力もある。姿、形の表現も素晴らしいのだが、目の表現にひきこまれる。やはり心根は目つきに現れるものなのだろう。

作家のクルィロフは1769年モスクワにて貧しい陸軍少尉の息子として生まれ、プガチェフ暴動による街の包囲により飢饉を経験。その際の空腹感は生涯に影響を与えたとされている。また幼い頃に父親を亡くし、家計は逼迫し体系的に教育を受けることはできず、仕事をしながら独学により文学に親しみ、あらゆる知識を身につけ、フランス語、イタリア語など習得し、また音楽にも精通するようになり、その才能はやがて文学活動を通し発揮されるようになったとある。

このような来歴からクルィロフが寓話、風刺という分野の作家として活躍したことや、肥満で大変な大食いであったことの背景の一端を推察することもできるかもしれないだろうが、天才にして大変な努力家であったことは間違いない。

動物などに、権力者に対する鬱憤や人間社会の不条理や滑稽さ、虚しさを託して文学として表現したクルィロフ。このSNSの時代に生きていたらどんな発信をしているだろう。(直)

詳細
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2020年04月14日

自分が文字の読み書きを初めて教わった時のことを思い出してみた。1冊の日本昔話の本を使って、教えてもらった文字に丸印をつけていった。実際の本に何か書くことを許されたドキドキと、新しい世界がひらけてゆくようなワクワクした気持ちを覚えてている。

「自分で読むお話集」(ナタリー・バルボチェンコ)は、字を覚え始めの子どもたちが自分自身で読むために作られた1冊。読みやすいように文字が大きくひとつひとつの単語にアクセントがついている。ロシア語はアクセントがとても大事だ。今まで耳で聞いていた言葉、単語をきちんと文字で確認しながら読んでいける。

収録されているお話は「豆の上のお姫様」「赤ずきんちゃん」「勇敢な仕立て屋」「ヘンゼルとグレーテル」「おやゆび姫」「シンデレラ」など12篇。

「自分で」物語を読めるようになる喜びは人生にとっても大きなことだ。よく知っているお話をひとつひとつ自分だけで読んでゆくことができるのはどれほど楽しいだろう。またこの本はロシア語を学ぶ者にとっても役に立つはずだ。音読の練習のお供にもおすすめしたい。

さて、私が文字を習得する際に使ったあの日本昔話の本。実家にまだあるだろうか。表紙の模様など覚えているけれど。懐かしいなぁ。(直)

https://karandashi.ocnk.net/product/438
2020年04月13日

月曜日。春の嵐。ベランダのジャスミンが咲き出している。蕾が風に揺れている。

トルストイ「さんびきのくま」。よく知っているお話だからこそ画家による表現の違いを楽しめる。このお話も色々な画家の絵本があり見比べが楽しい。

ザリツマンのこの絵本は、表紙にくま家族の仲良しな様子が描かれているところが微笑ましい。お父さんぐまがいいな。優しい眼差しは正面にいるシャボン玉をしているこぐまに注がれ、でも、お母さんぐまが編み物をしている毛糸玉を膝の上に乗せてしかもちゃんと落ちないように番をしている。お母さんぐまも編み物をしながらこぐまを見ている。ほほえみながら。夫婦の信頼関係や子どもに対する愛情が伝わる。

歩く時はお父さんとお母さんは腕を組んでいるし、2人で三輪車で進むこぐまを見守っている。家族の平穏な日常の表現が具体的なのだ。それだけに、その日常をかき乱す出来事に対する驚きと困惑の表現がより際立つ。最終的にお父さんは白目をむいている(ようにみえる)。

大切な家族の日常。それを守るため以後くま家族は出かけるときには家に鍵をかけるようになったと想像する。いやそれとも落とし穴をつくったかしら。(直)

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2020年04月11日

「麗しのナスト」はカレリア地方の民話絵本。画家はタマラ・ユファ。カレリアを表現する芸術家としてとても有名な存在。1937年生まれ。

主にフィンランドの叙事詩「カレワラ」を表現した作品で知られており、カレリア共和国の国立劇場において舞台美術にも携わり、作品はカレリア共和国国立美術館などに収蔵されている。

物憂げな瞳と髪飾りが印象的な美しい表紙にひかれる。カレリア地方の民族衣装にも注目したい。

カレリア共和国には数多の河川と湖がある。オネガ湖のキジ島は世界遺産。素晴らしいところだと聞いていてとても憧れている。(直)

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2020年04月10日

ロシア民話『カマスの命令により』(ブラートフ再話、マーヴリナ画)。ものぐさの三男坊のエミーリャは1匹のカワカマスカマスを助けた代わりに、「カマスの命令により」で始まる何でも望みがかなう呪文を教えてもらう。

水を汲んだ桶が自分で家に帰る望みから始まり、次々と呪文を唱えてのぞみをかなえてゆき騒動をおこすエミーリャ。とうとう王様が噂を聞きつけ宮殿に呼ばれるが、寝心地のよいペチカの上から離れたくないエミーリャは、ペチカごとお城に行き…。というお話。

皆から賢くないと言われているエミーリャの望みは確かにその時に楽をしたかったり、誰かを懲らしめたかったり、誰かに好きになってもらいたかったり、咄嗟に思いついた単純で短絡的なものばかり。でも最後にはお姫様も王国も手に入れてしまう。望みというものはストレートでまじりけのない方が祝福されるのかもしれない。

マーヴリナのカラフルな絵がお話の荒唐無稽さをさらに盛り上げる。ペチカが街中を蒸気機関車のように進んでいくさまなど迫力満点だ。

昔話の面白さ不思議さが詰まってる楽しい絵本だ。(直)

2020年04月09日

今日は久しぶりにオンラインでロシア語の先生とお話しすることができた。かれこれ1ヶ月余りになる。お元気そうで嬉しかった。

「有能りすさん」はチャルーシン画のおはなし絵本。何でもできるりすさんは森の仲間の頼れる存在。器用に何でも作ることができる。

例えば、りすたちの手袋、キツネの上着、うさぎのそれぞれの足用の運動靴、くまにのシャツ、小さなネズミのノースリーブワンピースなどなども手作りしてしまう。でもある時オオカミがやってりすさんは大ピンチに…というお話。

ソビエト時代の動物挿絵画家の第一人者のチャルーシンが生き生きとお話の世界を表現。森の動物たちの瞳の表情の豊かさに注目したい。動物同士の関係性が伝わってきてほっこりする。

切株の上に建つりすの家が素敵だ。(直)

https://karandashi.ocnk.net/product/434







2020年04月09日

奈良の絵本のお店ゆりゆりBooksさんの中田さんから封書が届いた。中田さんは以前からカランダーシの部屋のソビエト資料絵本の翻訳を何冊も手がけてくだっていて、新しく「勇敢なひげおじさん」(エリセーエフ画)の翻訳文と絵本を送ってくださったのだ。

表紙のくるくる巻いている黒い線はおじさんの長いひげ。なんと10メートルもあるらしい。なんてこったである。「…おかしな人間の絵を描くのが好き」という男の子が描いた絵から生まれたひげおじさん。

いただいた訳文をもとにお話をお伝えしたい。このひげおじさん、逃げ出したすずの兵隊たちを追うべく「勇者よ、起きろ。リュックを背おいたまえ」とちょっと怖がりな少年を誘い出し森へ出かける。そして困難にであうとひげおじさんのひげが谷を渡る始まる橋になり、船の帆になったり少年を助けるが、必ず少年の勇気を引き出すのを忘れない。

最後に少年は「よくやった!自分で弱虫をやっつけたな。君は本当の勇者だ!」とお墨付きをもらう。というこれは少年の成長物語。表紙だけ見るとただののん気で陽気なおじさんに見えるひげおじさんだけど、ちゃんと少年を導き叱咤し励ます素敵なおじさんなのだ。それにしてもひげがこんなにも活躍する絵本って他にもあるのだろうか。とてもユニークだ。

お忙しい中、翻訳をしてくださった中田さんには心から感謝している。元々Nさんからたくさん頂戴したソビエト時代の絵本たちはそれだけでも貴重な資料なのだけど、こうやって日本語で読めることでぐっと身近になる。大変ありがたいことだ。

そして、今カランダーシはオープンルームもずっとお休みしているけれど、またいつか皆さんに来ていただき、この絵本を楽しんだり面白がったりということができますように、と思ったわけである。そういう日が早く来ますように!

ゆりゆりBooksのすぐ目の前の佐保川は今桜が散って散ってそれはそれは大変美しい景を見せてくれているようだ。若草山も見える。これからは緑映える清々しい季節を迎えるのだろう。(直)

2020年04月07日

「お絵描き入門」。英国のエドウィン・ジョージ・ルッツ著のワークブックの露語版。100年以上も前に著されていたというのには驚く。左のページにお手本が描いてあり、それに倣って右側のページに描いてみましょう!という内容だ。

キツネやサクランボ、ティーポットやお人形、船や帽子の紳士まであらゆる物が登場。まず対象物のフォルムを捉えシンプルな図形や線でおこす。大切なのは比率とバランス。そこから段階を経て細部を仕上げてゆく。

試しに三色すみれを描いてみた。ほほう、なるほどだ。それなりにでも描ければ嬉しいものだ。馬の足の骨格なども見てると勉強になる。できれば中学生の頃に出会いたかったかもしれない。それほど素敵で楽しいワークブックだ。(直)


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