美しいロシア絵本の世界を是非お手元でお楽しみください。
2025年6月
ロシア絵本的日常【ダイアリー】:4
2025年06月29日

蒸し暑い日々が続いています。エアコンをつけていてもぼーっとしてしまいます。エアコンは得意ではありませんが、今年も折り合いをつけながら付き合って行かねばなりません。最後の紫陽花が色づいてきました。八重で小ぶりな花です。気がつくと涼しげな擬宝珠はもう咲き終わり、半夏生が咲き始めています。

木曜日はクニーシカの会でした。コズリナ先生のご指導のもと、テキスト『Моя собака любит джаз』を読んでゆきました。このテキストは今までに比べると難しいこともあり、個人的には、予習段階ではふわっとしか掴めていない文章の意味の解像度を先生や皆さんとのやり取りでぐぐっと上げてもらうという事が多く、大変さはありますが、なるほどそういうことか!と分かることの楽しさは大きいとも感じています。

今回、お話の中でГалоша というオーバーシューズなるものが登場しました。これは靴が濡れないために靴の上に履くカバーシューズのことで長靴のように丈は長くありません。コズリナ先生によると、雪や雨から靴を守るのはもちろんですが、溶雪剤の薬害から靴を守る役目が大きいと伺い、ロシアの雪との付き合い方の一端を知ることができ興味深いことでした。

また、面白かったのは、相手に皮肉を込めて何か言いたいときには反対の意味の文章をアクセントを強調して伸ばして発音するということを教えていただいたことです。ということで読み方の解像度も上げていただきました。忘れないようにしないとです。

そうそう、ロシアで音痴は「медведь на ухо наступил」と言うのだと教えていただきました。熊が耳を踏んだという意味です。ロシアらしい表現に思わず笑ってしまいました。勉強になります。感謝。

ロシア絵本を紹介ししています。その中で『跳んで跳ねて-ロシアのわらべ歌集』は、カルナウホワ、カピッツァ、ブラートフなどが収集した楽しいわらべ歌が9篇収録されています。
明るい彩りの臨場感たっぷりのヴァスネツオフの挿絵が、わらべ歌の世界により親しみを感じさせてくれます。
表紙の絵の可憐な白い花が印象に残りますが、ヴァスネツオフの植物の描き分けに注目して見てもきっと面白いでしょう。
絵を見ながらリズムに乗って詩を声に出して読めばさらに楽しくなるでしょう!(直)






2025年06月21日

蒸し暑い日が続いています。今日はもう夏至です。
庭では何種類かの紫陽花が咲いていますが、確か柏葉紫陽花が一番先に咲いて今尚綺麗ですし、やっと小さな蕾が顔を出した別種株もあり、まだまだ楽しめそうです。

今年は地植えの百合のひと株が私の身長を越える程大きくなり、蕾をつけました。昨秋鉢に植えた二つの球根も順調に育って、こちらも蕾をつけていますから楽しみです。

最近、英国推理作家協会のゴールドダガー賞の最終候補に残って話題の『ババヤガの夜』(王谷晶著)と『BUTTER』(柚木麻子著)を読みました。

『ババヤガの夜』は先日の広島行きの新幹線で一気に読んでしまいました。こちらはもちろんタイトルが気になったのは言うまでもありません。ババヤガとはロシアの民話に登場するバーバ・ヤガー(Ба́ба-Яга́)のことでしょうから、ストーリーとの関連性に興味津々だったのです。

「血が逆流するような描写と大胆な仕掛けで魅せる不正出のシスター・バイオレンスアクション」という帯文は間違いではないでしょう。その中でババヤガは、主人公が昔話で聞いた存在として登場し、最終的に大切な意味合いを持ってストーリーを着地させます。小説の中ではババヤガという言葉は出てきません。鬼婆という言葉で表現されていました。

うんざりするような閉塞的で血生臭い世界の描写の連続の中に、ババヤガという一般的には多分わかりにくい神秘的なファンタジー要素を盛り込むことで、文学としての奥行きの構築に成功したと思いました。面白かったです。

『BUTTER』はロシア関連は関係ないのですが、各方面での高評価は納得の、こちらも面白い小説でした。この2冊は全然異なるタイプの小説でありながら、この社会、世界で女性が生きてゆくことの難しさが浮き彫りになっており、その意味では共通点があると思えます。そしてそれが翻訳され、英国で人気を博してしいるのは興味深いことです。余談ですが、この小説のおかげ?で我が家ではちょっとしたエシレ・バターブームが起きました。

新しくロシア絵本を紹介しています。なかでも『木の絵本』は魅力的な絵本です。木の形になっていて、ページを開いて立たせることもできるのでお部屋に飾れます。

それぞれのページにも仕掛けがあって、キツツキが木を叩いたり、ハヤブサが木のてっぺんに登ったり、小鳥のたまごが雛になったりが操作できます。

くりぬきの覗き穴もあったり、地下の世界も教えてくれます。一本の木と共に生きる生き物たちの物語をこの絵本を捲ることで知ることができます。

とても凝っていて素敵な絵本です(直)

2025年06月15日

オープンルームのために久しぶりにソ連時代の絵本を飾りました。実際に手に取って見ていただくと様々な発見があると思います。ほとんどが紙をホッチキスでとめただけの簡単な作りの絵本です。カランダーシの貴重な資料として大切にしてゆかなければとあらためて思います。

6月10日、早稲田大学で行われたナディア・コズリナさんの講演会「ソビエト・アンダーグラウンド・アート:誠実に創作すること:見えないと感じる時でも、精神を保ちながらアートに忠実でいること」(1960〜1980年代)」に行ってきました。

「鉄のカーテン」の向こうでどんな芸術活動が行われていたのか、アヴァンギャルドの衰退以降のアンダーグラウンドのムーヴメントを時代背景と共に具体的に網羅してゆくという非常に濃い内容の講演でした。

表現者、芸術家として生きるにはあまりにも不自由な時代の中で、それでも自らのテーマをどうにかして発表しようとしてきたアーティストたちの軌跡。ただ、暗くて辛いという印象よりも創作と発表の場を創意と工夫で作りだすアーティストたちのバイタリティに驚かされ感服しました。

カバコフやブラトフのような生活のために絵本の仕事をしていたアーティストの話もありました。本来描きたいものとは別に向き合っていた絵本の世界。結局はソ連終焉と共に見向きもされなくなるのは、個人的には絵本で出会ったアーティストたちなのでちょっと複雑な気もします。だからこそクオリティの高い絵本も作られたとも言えますが。

最後にコズリナさんはカバコフの言葉を引用して講演を終えました。「私は進んだり戻ったりしながら、また前へ進んでゆくのだと思う。閉じた後には必ず開かれる時代がやって来る」良き学びとなりました。

新しく絵本を紹介しています。カバコフの作品もあります。よろしくお願いします。




2025年06月09日


広島に用事があり、せっかくなのでついでにひとりであちこち巡る旅をしてきました。
実は広島は初めての場所。やっと平和記念公園に行き、平和記念資料館を訪れ、原爆ドームを実際に見ることができました。楠の木の緑が美しく涼しい風が吹いていました。今年は戦後80年。あらためて平和へ思いを馳せる機会となりました。


平和記念公園のご近所のひろしま美術館にも寄りました。「ごろごろまるまるネコづくし展」で浮世絵を中心とした猫と人間の関わり合いにほっこりして、著名な画家の作品が次々に繰り出されるコレクション展ではとてもとても贅沢な時間を過ごすことができました。カフェでは可愛い猫ちゃんのムースをいただきました。


うんと早起きして向かったのは宮島・厳島神社です。まだどこのお店もまだ閉まっていて、風吹き抜ける社殿と海の中に建つ大鳥居を静かで清々しい朝の空気の中で訪ねることができたのは良かったです。また海を覗けば大きな魚たちが泳いでいましたし、地上では鹿たちがあちこちで昼寝(朝なのに?)しており、黒猫が小鳥を追って松に駆け上りひと騒動なんてこともあり、そういうことも旅の大切な思い出となりました。


そして、今回どうしても行ってみたかったのが下瀬美術館でした。ちょっと市内から離れていますが、頑張って行ってきました。2024年ユネスコの建築賞であるベルサイユ賞「世界で一番美しい美術館」に選出された2023年に開館したばかりの新しい美術館です。


なんと言っても坂茂氏の設計で水に浮かべて動かすことのできる造船所で作ったコンテナ式展示室という発想が斬新すぎますし、またその発想が瀬戸内海の島々から得たというところも興味津々でした。ちょうど若いアーティストの多彩な表現を見られる「周辺・開発・状況」展開催中でしたが、展示室の扉を開きながら進んでゆくという玉手箱を巡るような鑑賞体験はもちろん初めてで面白いものでした。


「アートの中でアートを見る」というコンセプトで建てられたという各棟は大きなミラーガラススクリーンで(メンテナンスが知りたいと思いました)一体化されています。そして、そのガラスに映る瀬戸内の海の景もまたアートであるということ然り、スタイリッシュで開放的なエントランス棟の天井を木材を使った木の造形で覆っていることも然り、また庭がエミール・ガレ!がテーマの美しい花の庭であること然り(こちらもメンテナンスの仕方が気になりました)屋上から美術館と瀬戸内海を見渡せるようになっていること然り…自然との新しい角度での一体化、調和を具現化しようとする姿勢からは、決して懐古ではなく未来へ向かっての創造であるという明確な矢印を感じました。本当に刺激的で貴重な訪問体験となり行って良かったです。

たくさん歩いて、時には全速力で走って!の急ぎ足での旅でしたから、体力使いましたが、良き旅でした。感謝。(直)
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