2019年11月03日
暑くなく寒くなく。1年中こんな感じだったらよいのにと勝手ながら思ってしまう。でも、紫蘭の葉がいつの間にか枯れているし、どんどん季節は進んでるようだ。
三鷹のストーンウエルアートギャラリーに現代ロシア写実主義絵画展を見に行ってきた。こちらは、ストーンウエル=石井氏が自らの主に風景画のコレクションを展示するために建てた個人立の美術館で、今年6月にオープンしたばかりだ。最近行かれたというMさんや何人かの方に教えていただいており、今回初訪問。
モダンでスッキリしたデザインの建物。芝生のアプローチに植栽は白樺。入口はガラスサッシで中の様子が見え期待が高まる。中に入ると入口の正面広い掃き出し窓から白い玉石を敷き詰めた日本庭園が見える。内観は白い内装に大理石用の床。壁にぐるりと初夏から晩秋までの季節に沿った風景画や静物側など30点程が掛けられている。
さあ、見るぞ!と進もうとするも、まず、入口脇の壁に掛けられている4点の作品にしばらく足を留めてしまうことになる。なんと、「芸術世界」のアレクサンドル・ベヌアやドブシンスキーの演劇衣装のエスキースの原画が展示されているのである!ご縁があって石井さんの元にやって来たそうでこれにはかなりびっくり!
館長で写実主義絵画研究家である石井徳男氏が丁寧に説明してくださるので、そこから始まる写実主義の絵の鑑賞はとても親近感を持てて楽しいものだった。人物よりも風景描写が多く描かれてきたロシア写実主義絵画であるが、こちらのコレクションは1989年から4年間に蒐集された時代の空気を反映したイデオロギー色のあまりないものが主軸とのこと。季節柄もあるだろうがどの作品からも大らかな自然と豊かな詩情が伝わってくる。
個人的に風景画はとても好きなのでどの作品も楽しむことができたのだが、特に微妙な色合いに晩夏の切なさも感じさせるアヴァキミャーンの「8月の終わり」は大変印象深く心に残っている。石井氏と親交があるというネシシームヌイの「昆布漁師」は人物を配した構図と動きが面白く、また水面の描写の明暗のコントラストが際立つ日本滞在中に訪れたという石廊崎の景も目を引いた。まとめて展示してされていた薔薇の静物画や女性像もアクセントのように記憶に残っている。
解説を聞きながら、本物のロシア絵画を本当に間近に見る事ができるのは贅沢なことだ。距離感的には少々乱暴な対比かもしれないが、大きな美術館がコンサートホールなら、こちらはライブハウスのような場所かもしれない。
とにもかくにも私邸を美術館として建て直し 、そのコレクションを公開してくださっているその心意気と志にスパシーバ!なのである。
◆行き方:吉祥寺公園口から小田急バスで15分、「新川」で下車5分。駐車場有。
◆住所:三鷹市新川6-3-19 (セブンイレブンのそば)
◆開館:水、土、日の10:30~17:00
◆入場料:800円(学生600円)
http://ishii-gallery.com